J-PlatPatのCSVを使った少し変わった期間の分析

今回の記事では、11/8のセミナーで説明したオフライン分析事例について紹介します。

少し前にオンラインゲームを提供しているC社を訴えた、老舗ゲームメーカK社の出願をJ-PlatPatのデータで分析しまして、こういう見方もできて「意外とイケるな?」と一人で盛り上がっていました。

このマップは、K社の権利化された出願約2,600件のそれぞれについて、J-PlatPatで取得できる出願日と公知日とに基づき、未公知期間(出願後どのぐらいで公知となったか)と、出願後経過期間(出願の新しさ)との軸でプロットした散布図です。


このマップを見るとわかるように、通常の特許出願は出願後18月後に公開されるところ、11年ほど前から出願後10月未満で公知となるものが非常に多くなっており、分割出願などを多用するように出願戦略が変わっていることがわかります。

これらの特許については、たまたま競合に類似の技術を実施され分割したものが増えたのではないかという見方もできるかもしれませんが、ここ7年ほどは未公知期間が5月未満の出願の密度がかなり上がっているようにも見えます。

出願日と公知日だけでもこのように出願戦略を把握できるので、データの使い方は本当に大事だなと感じました。

それから、別の観点として、未公知期間は原則18月なわけですが、この図で見てもわかるように、19~20月経ってようやく公知となる場合もかなり多そうで、未公知期間の認識としては「19~20月程度」と見ておくのがリスク回避の観点から重要ではないかと感じました。

さらに、このマップにおいて未公知期間の上側に1つ突出してたプロットがありますが、この出願のように出願後約24月後に公開になる場合もあることも頭には入れておいた方がよいかも知れません。

Xでは上記の内容についてポストしていたのでこの記事は投稿当初上記部分まででした。
しかし、上記の記事を書きながら未公知期間で見ると明らかに短期間で公開された出願の比率が増加していると感じられ、占有率の動向を確認するのも面白いのではないかと感じ、占有率の動向を追加情報としてまとめました。そうしたところ、下のグラフに示すように2010年以降の未公知期間の短期間化の傾向を明確に確認できました。


より具体的には、2015年以降の出願について4月以内に公開になった出願の比率が右肩上がりで増加していることがわかります。

そのなかで2021年は特にその傾向が顕著です。この年の出願は出願後18月以上確実に経過しているものの、未公知期間(Tu)が4月以下で公開された出願が8割を占め、通常の公開時期である18月程度経過して公開された出願が1割程度となっています。このため、ほとんどの出願が分割出願、優先権主張出願又は早期審査を伴う出願などであって早期に公開される出願であることが考えられます。

以上のように同社が近年かなり戦略的、機動的な権利化の体制となってきていることが可視化できました。

上記の2つの分析は未公知期間という同じデータについて集計し分析していますが、グラフの描き方により見えてくる情報の印象はかなり変わるのではないかと感じています。このように、特許情報分析では、分析の目的に応じた「グラフの種類の選択」や「軸の立て方」や「集計値の取り方」が重要であることが分かって頂けたのではないでしょうか。

今回の記事は以上です。

 弊所では今回説明したような手法・ツールなど様々な特許情報分析の手法を鋭意開発しており、クライアントの要望に沿った分析手法の開発も行っています(なお、弊所では顧問契約をしていただいているクライアント様には弊所開発のツールを自由に利用して頂いています)。

 また、このような分析手法に関する個別指導・セミナーや、個別の分析プロジェクトについても対応可能です。ご相談などありましたら管理人の特許事務所のページからお知らせください。

 よろしくお願いします。