エクセルで作る特許ファミリーチャート

今回の記事はエクセルで作るファミリーチャートのお話です。

特許調査や分析をしていると特に重要な特許ファミリーが見つかったりします。ここでいう「特許ファミリー」というのは、ざっくりいうと1つの出願から派生する別の出願も含めたグループのことです。

このような特許ファミリーは、優先権主張を伴う出願や分割出願や継続出願といった特殊な出願を行うことで派生していきます。そして、特許ファミリーが構成されるわけですが、派生した特許の件数が多いほど権利化のためのコストをかけているわけでその会社にとっては重要な特許技術であるといえます。

一方で、競合他社から見れば、競合企業が自分の製品や市場を保護するために多額のコストを掛けていることから真似る価値が高い技術である可能性が高く、権利侵害のリスクのある技術とも言えます。そして、そのような特許ファミリーを適切に理解すること、そして派生させた権利者の意図を理解するには、各特許がどの特許から生じたかを示す家系図のようなチャートを作ることが有効になります。

このような特許ファミリーのチャートを作る場合には、その元になる特許ファミリーの特許情報を各種の商用データベースで取得します。また、このような情報は無償のデータベースではLens.orgでも取得できます。下の画像は50件ほどの出願をファミリーの情報をLens.orgで取得した例です。当然ですがダウンロードしたデータだけ見ても特許ファミリーの理解は困難です。


ということで、このデータについてチャートを作成するために整理します。
そして、ChatGPTを使って作成したVBAプログラムを実行させると、画像のように出願毎のボックスを配置できます。


この方法では、ファミリーに含まれる出願をボックスとして表示していますが、列に出願年を設定することで、これらのボックスを出願された年に配置することができます。
また、この後の工程のために、ボックスにはGoogle patentsへのリンクも設定しています(この辺の処理についてはChatGPTは知らなかったので自分で修正しました)。

ここまで用意できれば出願毎にGoogle patentsを確認していけば派生関係(親子関係)は把握できるので、オートシェイプの線で接続していきます。これによりファミリーの構造が理解できるチャートを作成できます。

上の画像の状態から少し手を加えた状態が下の画像です(最終バージョンは詳細を追加しています)。
このように整理することで、特許が派生していくなかで複数の系統に分岐していく関係も分かります。また、黄色のボックスの特許は米国で実際の係争で対象となった特許であり、重要な特許はファミリーのなかでも後の時期に生じている可能性が高いことが伺えます。また、重要な特許の系統の特許のほうが重要であろうという予測もできます。さらに、新しく派生して出願されているものもわかるため、これらの特許について他社に対して何らかの権利行使の可能性があるのではないかという予測もできます。


このような特許ファミリーのチャートは、日本の特許であればJ-PlatPatで確認できます。しかし、グローバルの出願の場合には提供されているものはあまりないようで、自分で作るしかないためなかなか大変です。

ただ、競合企業の主要技術のような重要な特許ファミリーについてはこのようなチャートを作り整理をすることで将来的なリスクを予測できる可能性もあるため、特許調査・特許分析の立場から見て重要ではないかと感じています。

今回の記事は以上です。

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